とらねこじじの雑記帳

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 ■心をつなぐ給食!



「うちの小学三年生の娘に学校で一番好きなことは?」と聞くと
「給食」という答えが返ってきました。


「じゃがいもと玉ねぎ、あっ、にんじんも入れた」
「今日は、ぜったいカレーだね」
「私はクリームシチューだと思うけどな」

 まみとゆり子は小学三年生。今日もまた、休み時間に給食室の
ガラスにへばりついて、中の様子をじっと見詰めていました。

 二人は休み時間になると、何かおもしろいことはないかなあ、
と校内をたんけんします。給食室の前を通りかかったとき、
まみがこう言い出したのです。

「ああいいにおい。あげもののにおいだね。ねえ、今日の給食
何だっけ」
「知らないよ。こんだて表、見てこなっかたもん」

 ゆり子も鼻をくんくんさせて答えました。
「そうだ。今日から毎日、こんだて表を見ないで、給食のメニュー
をあてるっていうゲームをしない」
「うん。おもしろそう。やるやる」

 まゆみたちの小学校では、自校給食といって、学校の給食室で
給食を作ります。5人のおばさんたちが、エプロンに三角きんを
して、大きなおなべをかきまぜています。給食室とろう下のさかい
は、ガラスばりになっていて、中の様子がよく見えるのです。

「おや、また来てるよ、あの子たち。よっぽどおなかがすいて
いるんだねえ」

 給食室ではたらいている山田さんは、二人が毎日のようにガラス
のところから自分たちを見ているので、気になってしかたありま
せん。でも、とても忙しいので、手を休めずにしごとをしていま
した。

 山田さんには、もうひとつ気になることがありました。あとかた
づけの時、入れ物が全部からっぽになって返ってくるクラスがある
のです.汁もからっぽ、ごはんつぶひとつ残っていないのです。
3Cと書いてある入れ物は、いつでもきれいに食べてありました。

「あたしゃ、この学校にきて10年になるけど、こんなこと
はじめてだよ。毎日こんなにきれいに食べてくれるなんて、
作りがいがあるねえ」

 と山田さんは、他のおばさんたちと顔を見合わせて、いつも
話していました。

 お昼の時間。まみたちのクラスでも給食のはいぜんが
はじまりました。

「わあ、肉じゃがだ。二人ともはずれ」
「おしかったね。でも私、肉じゃが大好きなんだ」

 まみとゆり子は、ようそうがはずれても大よろこびでした。
その時です。

「おーい、みんな。きらいなものないか。あったら食べてやるよ。
えんりょしないで言っとくれ」

 ゆり子の前の席たけしが、大きな声でさけんでいます。

「たけちゃん、にんじんおねがい」
「私も、このお肉、少してつだって」

 たけしのまわりに何人かが集まってきました。たけしはクラスの
人気者。元気で何でも良く食べました。

「全部はダメだよ。きらいな物もかならずひとつは食べるって、
先生とやくそくしたろ」

 たけしがそう言うと、今度はまゆみが前に出て、
「ごはんのたくさんありますよ」とよびかけました。
「先生もちゃんとおかわりしてね」

 3年C組はこんなふうに、みんなで協力して給食を食べて
いました。だからいつでも和気あいあいで、その楽しいこと、
にぎやかなこと。

 山田さんは、まみたちの教室に行ったことはありません。
でも、今日も、全部からっぽになって返ってきた入れ物を見て、
みんなが楽しく食べているようすが、目にうかぶのでした。
そんな時うれしくて、このしごとをしていてよかったなあと
思います。

「もしかして、いつも来るあの子たちのクラスかもしれない」
なんとなく、そんな気がするのです。山田さんは、3年C組の
みんなにあってみたくなりました。

「いつも残さず、きれいに食べてくれてありがとう。作る人に
とって、おんなにうれしいことはありません」
と伝えたらと思うようになりました。
 
 次の日、山田さんはガラスごしに二人の姿をさがしながら、
しごとをしていました。

 まみたちがあらわれると、なぜか急にほっとして、二人に話し
かけるようにつぶやきました。

「今日も、心をこめて作るからね。なあに、ことばにしなくても、
こうすることで私の気もちは、じゅうぶんに伝わるさ」
と、もくもくキャベツを切り分けてゆくのでした。






  
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